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東京型スマート農業研究開発プラットフォームが第1回講演会開催

2021年1月25日

 小規模、多品目生産を特徴とする東京農業を維持・発展させるため生産者の高収益化の実現を先進技術の活用で目指す東京型スマート農業研究開発プラットフォーム(事務局=東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センタースマート農業推進室)は21日、「スマート農業のすすめ~農業を情報技術でかっこよく稼げて感動があるものに」をテーマに、第1回講演会を開催した。(一社)日本農業情報システム協会(JAISA)の渡邊智之代表理事が講演した。

 渡邊代表は、富士通㈱でスマート農業ソリューションの開発主導や、農水省でスマート農業を推進した経験を話し、スマート農業を「情報技術を活用して効率化すること」に留まらず「営農のリスクを最低限にし最大限の収入を得ると同時に、自社ならではのノウハウを確立し、ブランド化や事業承継に役立てること」との見解を示した。さらにスマート農業を①センサーによる遠隔監視・自動制御、②GPSによる農機の自動制御、③スマートフォン・タブレットによる作業管理、④POSシステムによる販売管理、に分類し、それぞれのメリットと問題点を解説した。

 また、農業は今後大規模化が進展することに伴い、経験と勘による農業は困難になることで、リスクの発生が懸念されていることについても言及。具体的には、日本の大規模農業では農家が所有する農地は小さな田畑の集合体でありスケールメリットが働きづらいこと、スピーディな人材育成が困難であること、農薬の散布等でヒューマンエラーが起きやすいことなどを課題として挙げた。これらを将来スマート農業で解決するための提案では、作業記録によるリスクヘッジの重要性や、農地売買・貸借において農薬や肥料散布、作付履歴の情報を参考にする必要性、農機シェアリングをITで支援すること、金融機関が営農の記録を融資の判断材料とすること、作付シミュレーションによって収穫量を増加ではなくビジネスチャンスとなる作付け時期を見つけること、コストシミュレーションで経営判断を支援することなどについて語った。また、ベテラン農業者の知識をスマート農業で形式知化する動きについても紹介した。

 渡邊代表は、「スマート農業の効果は効率化のイメージが強いが、それは当たり前のことで、大切なのはその先だ。経営ビジョンが重要であり、ビジョンなく導入すると無駄に終わる。また、現在は農業ビッグデータを蓄積するだけではなく、活用する方向にフェイズが移っている。テクノロジーを組み合わせた課題解決の事例が出てきている。(スマート農業の技術を)1つではなく、組み合わせることで更に精度を上げることができるだろう」と話した。

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