人とほぼ同じ速度でリンゴやナシなどの果実収穫を実現
農研機構と立命館大、㈱デンソーは果実収穫ロボットのプロトタイプを開発、人とほぼ同じ速度でのリンゴやナシなどの果実収穫を実現したと発表した。三者は、果樹生産の担い手減少と高齢化に対応するため、作業の大幅な省力化に向けた作業用機械の自動化・ロボット化と機械化に適した樹形の開発を推進してきた。
今回開発された収穫ロボットは、自動走行車両に牽引されながら、2本のアームで収穫を行うことが特長。収穫した果実は自動走行車両の荷台に設置した果実収納システムに送られる。果実収納システムではコンテナに果実が一杯になると空コンテナと自動で交換しながら自動収穫を継続する。人による収穫(1個あたり11秒)とほぼ同じ速度で収穫が可能という。果実を把持するためのハンドは3つの爪で構成され、果実を傷つけない程度の把持力で果実を掴みながらハンドの回転により収穫する機構を開発。また、果実の認識及び熟度判定については、可視画像撮影と距離計測が可能なカメラの可視画像を用いてAI(人工知能)に多量のデータを学習させることにより行った。果実認識及びニホンナシの熟度判定については日中、夜間に関わらず90%以上の精度が得られたという。
現在、日本の果樹生産においては生産者の高齢化などから作業の機械化が必須となるが、果樹は樹形が立体的で複雑なため、受粉、摘果、収穫、整枝・せん定など多くの作業を手作業に頼らざるを得ないことから、機械化が非常に遅れているのが現状。しかし、近年は自動車の自動走行や各種ロボット、AI技術の開発と低価格化など技術の進歩が著しく、果実収穫といった複雑な作業においてもこれらの革新的技術を取り込んだ機械開発の可能性が見えてきたという。そこで農研機構等では、機械化を推進するため、樹種共通で樹形を可能な限り平面に近づけるV字樹形などの列状密植樹形の開発や、様々な作業に利用できる自動走行車両等の開発を両輪として、開発研究を進めてきた。
今後、開発したロボットの市販化に向けて現地実証試験などを繰り返し、安定性や正確性などをさらに向上させるとしている。