㈱農林中金総合研究所は20日、「2020~21年度改訂経済見通し」を公表し、20年度の実質GDP成長率は▲6・5%(前回〔6月〕予測から下方修正。6年ぶりのマイナス)、21年度は2・7%(前回見通しを据置き)と予測した。
日本経済・物価の見通し(総論)では、「2020年度は▲6・5%成長と戦後最大のマイナス成長、21年度は2・7%成長と鈍いリバウンド。足元7~9月期は、経済活動が再開されたこともあり、前期比年率15・5%と、4四半期ぶりにプラスに転じるが、コロナ前から落ち込んだ分の4割程度しか取り戻せず」「20年度下期も日本を含む主要国で新型コロナの感染が燻り続けるとの前提の下、経済活動水準の持ち直しペースはなかなか上がらず、足踏みに近い状態が続く。医療崩壊が懸念される場合には経済活動が再び制限される可能性も」「その後、21年度にかけて世界全体でも持ち直しの動きが継続、延期された東京オリンピック・パラリンピック(五輪パラ)の開催もあり、夏場にかけて成長ペースが一旦加速。五輪パラ後は一旦調整するものの、持ち直しの動き自体は緩慢ながらも継続。直近ピークの19年7~9月期の実質GDP水準の回復は早くとも24年度以降と想定」と見解を示している。
また、民間消費、企業設備投資について以下のように分析・見通している。
【民間消費】緊急事態宣言の解除後、消費マインドや消費行動は緩やかながらも持ち直しに転じたが、新型コロナの感染予防に向けた「新しい生活様式」への対応に加え、自粛ムードが残っていることもあり、回復が遅れている。ペントアップ需要に加え、一律10万円の特別定額給付金の配布などで、一部で消費刺激効果が発生(「巣ごもり消費」が堅調であるほか、生活家電・情報家電なども好調。7月の乗用車販売台数〔含む軽〕は前年比▲12・8%と減少幅を大幅に縮小)一方、「GoToトラベル・キャンペーン」が開始されたが、感染再拡大への警戒から、「東京」発着が除外されたほか、自粛ムードも根強く、経済効果が弱まったことは否めない。家計の所得環境は厳しくなりつつあるほか、「新しい生活様式」を心掛けることを前提にすると、消費が堅調に回復していく姿は見込みづらい。民間最終消費支出は、20年度:前年度比▲6・4%(7~9月期:同5・0%)、21年度:同3・8%と予測。
【企業設備投資】業績悪化で設備投資を見送る動きが強まったとみられる一方で、テレワーク促進に向けた投資は底堅く推移。20年度設備投資計画では増加の見通しが多いが、時間経過とともに下方修正され、最終的に減少に転じることも。(日銀短観6月調査では、前年度比1・5%の増加計画〔全産業+金融機関、ソフトウェア・研究開発を含む、土地投資額を除くベース〕であったが、この時期としては異例の下方修正。政投銀の調査では、大企業の国内設備投資計画は前年度比3・9%だが、実績は下振れしやすく、9年ぶりのマイナスとなる公算)。慢性的な需要不足状態が続く見込みであり、先行き供給能力の削減を余儀なくされる企業が増える。中長期的に省力化・省人化ニーズは潜在的に高いとみられるものの、当面は調整色の強い動きが想定される。20年度:前年度比▲4・6%、21年度:同▲0・8%(3年連続の減少)と予測。