宮城県はこのほど、高知大学との共同研究により、宮城県の基幹種雄牛「茂福久」号のフリーズドライ精子による子牛が世界で初めて県内酪農家で誕生したと発表した。
宮城県によれば、平成31年1月18日に共同研究機関である高知大学で「茂福久」号の精子について、フリーズドライを実施、令和元年7月3日に畜産試験場で顕微授精により受精卵(胚)を作出、7月11日に県内酪農家の雌牛に受精卵を移植し、今年4月14日に雌子牛(黒毛和種、30kg)が誕生した。
フリーズドライは、食品や医薬品の安定保存技術として実用化されたもの。マウスなどの実験動物やウマで産子生産の報告があるが、ウシでは胚の作出のみで産子生産の報告はないという。フリーズドライは常温で保存可能とされているが、今回誕生した子牛は冷凍(マイナス30℃)保存された精子を用いて生産された。今後、常温保存したフリーズドライ精子を用いた子牛生産を目指すとしている。
現在、ウシ精液は凍結され液体窒素(約マイナス196℃)が充填された専用容器に保管されている。液体窒素は日々蒸発することから、継続的な補給が必要とされているが、万が一、自然災害等が発生し、液体窒素等の供給が絶たれた場合には貴重な遺伝資源を失う恐れがあることから、この技術がウシ精液の新たな保存方法として期待される。