みどりの食料システム戦略(以下「みどり戦略」)が策定されてから、この5月12日で5年になるとして、同日付の日本農業新聞に、「目標達成 道半ば」なる見出しでその進捗状況の報告記事が掲載された。
みどり戦略は、2050年までに、➀有機農業を全農地の25%(100万ha)に拡大、➁化学農薬の使用量半減、➂化学肥料の使用量3割減、を目標とするもので、特に➀の有機農業については当時の有機農業比率0・5%からして〝無謀〟ともいうべき数字が打ち出され、「農水省(職員)が有機農業をやるのか」との揶揄も飛び交った。EUは2030年に有機農業比率25%を目標にしており、これを20年遅れながらも目標に据えたもので、これまで環境問題には消極的であった我が国も、EUをはじめとする世界的な脱炭素化や持続可能性を重視する潮流を無視できなくなったものと理解している。
それから5年を経過しての進捗状況が同紙面に示されており、➀有機農業農地面積については、2050年目標100万haに対応した30年目標6・3万haに対し、実績は3・5万ha、➁化学農薬使用量の低減(19年度比)は、同じく50%減に対応する10%減に対し、20%減(24年)、➂化学肥料使用量の低減(16年度比)は、同じく30%減に対応する20%減に対し25%減(23年)となっている。サブ見出しでは「有機農業面積▶遅々」「化学農薬・肥料減▶着々」と表現されている。
こうした現状を踏まえて、農水省は7月に有機農業の推進に向けた30年までの新たな基本方針を策定することにしており、これに関連して現行の環境保全型農業直接支払交付金の見直しや、複数産地が連携しての量の確保や既存の流通網を使っての共同輸送をはじめとする、需要に見合った品目と量を安定供給する体制づくり等の検討が行われている。
こうした動きに異論はないが、一つはそもそもみどり戦略は脱炭素化や持続可能性の確保をねらいとしているものが、有機農業についての目標数値が独り歩きし、その本質、自然との調和や持続可能性の確保等は横に置かれ、地域循環の形成や暮らしや生き方等、肝心の環境問題との向き合い方についての議論が欠落しているように感じられてならない。 今一つは化学農薬と化学肥料の使用量低減の取組についての評価が不十分であることである。この取組は有機農業以上に環境負荷低減への貢献が大きいものであり、すでに2030年目標を上回って進捗しているのは、JAグループが24年のJA全国大会で決議した環境調和型農業推進の成果であるとも言える。これについての世間の評価がほとんどないだけでなく、JAグループ自体も認識が乏しいと言わざるを得ない。みどり戦略の土台、全体の環境負荷低減はJAグループが担っているとの自負を持ってしかるべきだ。
JAグループは来年秋の第31回JA全国大会に向けた準備に入っていく。化学農薬・肥料の価格が高騰し農業経営の持続性が揺らぐ中、ますます環境調和型農業が持つ重要性は高まっている。大会議案の柱として、是非、数値目標も含めて、環境調和型農業の取組強化・レベルアップを掲げ、全中は強力な旗振りをしてほしい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2026年6月5日号掲載



