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〈蔦谷栄一の異見私見〉小泉農水大臣、叫びに応えてください!

2025年6月5日

 江藤農水大臣の失言問題で後任となった小泉新農水大臣は、早速に備蓄米の随意契約での売渡に踏み出すとともに、古米・古々米とはいえ現状の半値の5キロ2000円で供給するだけでなく、ネット販売やスーパー等での販売により供給ルートの多様化を試みる。また農水省内に米の価格対策のため40人体制の「米対策集中チーム」を発足させた。さらにテレビ番組では「あらゆる選択肢は否定しない」として米の輸入拡大案に含みを持たせた発言もしている。異論はあるが、パフォーマンスはさすが自民党の看板に相応しい。

 直面する米の価格高騰や店頭での米不足への迅速な対応を図っていくことはまさに重要かつ必要な対策であるが、そのうえでの小泉農水大臣へのお願いである。今回の米不足の背景には温暖化とともに担い手の不足という構造問題がある。ウクライナ侵攻をはじめとする国際情勢の悪化によって穀物需給がひっ迫して食料安全保障が最重要課題となって食料・農業・農村基本法の改正を行い、これを実行していくための基本計画が今年度からスタートした。基本計画では2027年度以降の水田対策を講じていくことを含め、今後5年間で農業の構造転換を集中的に進めていくことになっている。そして農政審による基本計画についての答申を目前にした3月25日には、衆参両院農林水産委員会で与野党の全会一致で基本計画に関する決議を採択しており、その第一番目の水田政策の見直しで、飼料用米など意欲を損なわない制度を設計、納税者の理解を図りつつ直接支払制度を設計、多面的機能を念頭に水田面積を維持等が盛り込まれている。これは改正基本法や基本計画策定に当たって食料安全保障の確立のため与野党が論戦を戦わせながら、危機に瀕する日本農業、特に水田稲作を守っていくために歩み寄って方向性を打ち出したものだ。やっと与党と野党の壁を越え超党派で水田稲作の維持を目指そうとする感がある。小泉農水大臣にはこの付帯決議を尊重すると同時に、その実現に全力を尽くしていくことをお願いしたい。

 以下は都心の米屋を小泉農水大臣が視察した際、そこで大臣が米を「安くする安くする、その威勢のいい言葉ばかり」話しするのを聞いて、某氏が米屋の外から叫んだ話を同人がFacebookにメッセージしたもののシェアである。「大臣、米農家を守ってください。米農家のこと、考えてくれてますか?」「米安くすれば、米農家はまた作れば作るほど赤字になります」「米の値段だけの話じゃなく、水田フル活用交付金、収入保険、平成農政の限界がきています。農政全体にどういうビジョンを持っているんですか?」「米を作る意欲を失ったら、米不足になる。そんな循環で困るのは国民です」「大臣、食卓を守ることと同時に、米農家をしっかり守る。それが農林水産大臣の役割だと思います」これに対し「(あまりにうるさかったからか)ついに大臣は、私の方を向き『わかりました』と言ってくれました」「排除しなかった、SPのみなさん、ありがとうございました」が続く。そして「周りにいた近所のおばさんは、『本当にそのとおりだねえ』と拍手をしてくれました」。まさに、我が意を得たりの投稿。小泉農水大臣の「わかりました」の返答を踏まえての奮闘を心から期待したい。

(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2025年6月5日号掲載

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