中山間地域フォーラム(生源寺眞一会長)は23日、東京大学弥生講堂一条ホールで設立13周年記念シンポジウムを開催、約200名が参加した。テーマは「これからの農村政策を考える~食料・農業・農村基本法20年を契機として」。小田切徳美副会長(明治大学教授)の開会挨拶のあと、生源寺会長(福島大学教授)が「基本法下の農業・農村政策と中山間地域」で基調報告。また、基本法制定当時の政策担当者からの報告として今井敏氏(農林漁業信用基金理事長)が制定の経緯を紹介しつつ、農政の現状や今後の農村政策について考えを述べた。現場からの報告として、長崎県・対馬里山繁営塾代表理事の川口幹子氏が地域おこし協力隊の現場から、高知県・前檮原町長の矢野富夫氏が自治体行政の現場から地域興しの事例を報告した。パネルディスカッションでは、法政大学教授の図司直也氏と日本農業新聞の尾原浩子氏が進行役となり報告者4名をパネラーに、地域興しの課題や国の施策への要望などについて意見交換した。
今井氏は、基本法・基本計画について、「国民の関心を引きつけやすい自給率をテコに、5年に一回、国民全体でいまの食料・農業・農村について国民参加・国民合意の農政を進めていくんだという意図も込められていた」と語るとともに、「原点に返り国民的議論を重ねながら見直していくという作業を大事にしていかないと、基本法が曖昧な存在になってしまい、食料・農業・農村が国民にとって遠いものになってしまう」と危惧した。
対馬市の川口氏は、東北大学特別研究員の立場から生物多様性保全担当の対馬市島おこし協働隊として対馬に移住、結婚・家庭をもちながら、耕作放棄地の解消、グリーンツーリズムの実践、〝学び〟を商品化することなど、豊かな自然環境を守る農山漁村の活性化に取り組んでいる様子を語った。
檮原町の矢野氏は、従来の行政組織の常識の殻を破り、本当に価値を生む能力をもった経営体になる〝自治経営〟が必要だとして、檮原町の〝自治経営〟の考え方を職員との対話で意思統一、職員一人ひとりが経営者の意識で、町民から課題を聞き取り、住民を巻き込んだ取り組みで地域づくりを進めてきたことを報告。〝自分でできることは自分でする〟ことを基本に地域資源を生かし自然と共生・循環、成果をだせる仕組みづくりを築いてきた様子を語った。