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〈行友弥の食農再論〉本当の相互主義とは

2025年3月25日

 「やはり」と思った。米ホワイトハウスの報道官が今月11日の記者会見で「日本は輸入米に700%の高関税を課している」と批判した件だ。「関税には関税を」の「相互主義」を掲げるトランプ政権が日本の農産物関税を問題視することは予想していたので、驚きはなかった。

 発言は事実誤認に基づく。日本が輸入する米国産米の大半は国家貿易によるミニマムアクセス(MA)米であり、制度上は「無税」だ。「700%」は国家貿易の枠外で民間が輸入する場合の「1㌔あたり341円」を指すと思われる。十数年前ごろまでは、当時の国際価格を元に関税率に換算した778%という数字がよく報道された(筆者もそう書いた)。報道官は古い文献を見たのだろうが、その後は価格がかなり上昇しており、全く妥当性がない。

 ただ、日本側が「MA米は無税だ」と反論したのも違和感がある。MAも政府は1㌔あたり最大292円のマークアップ(輸入差益)を徴収している。それは単なる管理経費ではなく、国内の農業振興にも充てている。「関税とマークアップは何が違うのか」と農水省の担当者に聞いたことがあるが「民間輸入と国家貿易の違い」というだけで、納得のいく回答はなかった。

 ちなみに小麦の国家貿易にもマークアップがあり、TPP11(米国が離脱した環太平洋経済連携協定)や日米貿易協定には、その削減が盛り込まれた。つまり、日本政府が何と言おうと海外からは関税とみなされているのだ。しかも米の1㌔292円は60㌔に換算すると1万7520円に上り、無税どころか「低関税」ですらない。

 道理をわきまえない相手の揚げ足を取ったり、感情的に反発したりしても得るものはない。どの国にもそれぞれ守りたいものがあるのは当然で、理を尽くして主張すべきは主張し、譲れるものは譲って一致点を探るしかない。

 ちなみに「相互主義」をスマホの翻訳ソフトで英訳したら「Reciprocity」と出た。それを日本語に訳し戻すと「互恵」になった。「目には目を」の応酬ではなく、互いの主張によく耳を傾け合って最善の道を探るのが本当の相互主義であろう。

(飯舘村地域おこし協力隊・いいたて結い農園勤務/農中総研・客員研究員)

日本農民新聞 2025年3月25日号掲載

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