先の10月18日、第30回のJA全国大会が開催された。JA全国大会は3年に1回開かれており、30回目を迎えたということ自体、そこに長年の積み重ねと大きな意義を感じさせられる。大会議案での環境変化・情勢分析は、①食料・農業・農村基本法の改正、➁国際情勢の変化に伴う生産資材価格の高止まりと適正な価格形成の必要性、➂農業生産基盤(人・農地)の弱体化、➃みどりの食料システム戦略の実践、➄物流センター2024年への対応、と整理されているように、時代が大きく変化する中で、JAグループはどのような今後の活動方向を明示するのか、内外から大きな関心を持って見られていた。
今回大会議案は、「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力~協同活動と総合事業の好循環~」をテーマに、食料・農業戦略、くらし・地域活性化戦略、組織基盤強化戦略(JA仲間づくり戦略)、経営基盤強化戦略、広報戦略の5つのカテゴリーに区分されて取組みが打ち出されている。その一丁目一番地に位置づけられる食料・農業戦略は、①食料安全保障への貢献に向けた地域農業の実践、➁次世代の確保や環境との調和を通じた持続可能な農業の実現、③農業所得の増大・国産農産物の安定供給、➃農業の担い手ニーズへの対応強化に向けた営農経済事業体制の整備、で構成される。この➀では、「適地適作の観点から品目・地域実態を踏まえた生産振興」「組合員間、組合員と役職員間の話し合いを通じて、確信ある地域農業振興計画等を策定・実践」等が、➁では「労働力支援・農福連携の取り組みや兼業・副業等による農業従事の取り組みを強化」「より良い営農活動(GAP手法を活用した営農の実践)や環境調和型農業など生産現場の課題を踏まえながら、安全・安心、環境に配慮した農業の推進」等が書き込まれるなど、相応の中身となってはいる。
しかしながら食料・農業・農村基本法改正と平仄を合わせた〝穏当な〟中身という感が強く、農業生産基盤(人・農地)の弱体化が環境・情勢変化の第3番目に位置づけられていることに象徴されるように危機感が薄いという印象は否めない。また地域農業を強調しながらも「都市農業」の文字一つなく、加えて環境調和型農業への取組みは常なるステップアップを目指す姿勢を示す「有機農業」の文字が欠落している。生産及び消費構造が大きく変化する中、地域農業の再生を軸に食料自給率の向上と食料安全保障の確保向けて、積極的に新たな取組みにチャレンジしていく姿勢がもっと欲しかった、というのが率直な感想である。
今、まさに崖っぷちに立たされている日本農業を再生させていくためには、適地適作による多様な地域農業の展開をベースに地消地産を推進し、准組合員や地域住民と一緒に地域自給圏づくりを目指すことにより地域レベルから自給度の向上をはかり、その総体として食料安全保障を確立していくことこそが求められる。JA全国大会の決議を下敷きにしながら、地域の実情をしっかりと踏まえて、地消地産を基本コンセプトに地域自給圏づくりを目指して地域ぐるみで地域農業振興計画を策定・展開していくことを期待したい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2024年11月5日号掲載