みどり戦略法案がこの4月22日に可決・成立した。本法は農業の環境負荷低減を目指して、農家や食品事業者、消費者らの理解・連携を基本に、化学肥料・農薬の低減や有機農業などの実現に取り組む農家を融資や税制で支援する仕組みの創設等を見込む。
昨年5月に決定されたみどり戦略は当初、唐突感をもって受け止められたものの、少しずつ浸透しつつある。JAグループは昨年10月29日に開かれた第29回JA全国大会で、「みどりの食料システム戦略をふまえた環境調和型農業の推進」が含まれた大会議案を決議している。具体的には「化学肥料・化学農薬の使用量削減や温室効果ガスの排出低減に向け、土壌診断にもとづく適正施肥や耕畜連携による堆肥を活用した土づくり、IPMの推進、自給飼料の生産・利用拡大など、既存技術を活用した環境保全型農業等の先行事例の横展開・普及に取り組むとともに、栽培暦の見直しも含め、地域実態に応じた環境調和型農業の実践・拡大に取り組」んでいくことをうたっている。みどり戦略自体は2050年までの目標実現を目指すが、JAグループは2025年なり2030年での中期目標を明確にするとともに、目標をブレイクダウンすることによって数値化・見える化していくと同時に、各年度ごとの取組を工程表に落として、着実に実績を積み重ねていくことが課題となる。
こうした農協グループの動きとあわせて注目しておきたいのが有機農業関係グループの動きである。全国有機農業推進協議会、持続可能な農業を創る会、有機農業参入促進協議会、日本有機農業研究会等に、生協や事業者等が参画して、「日本オーガニック会議」(以下、「オーガニック会議」)を昨年12月に立ち上げている。
有機農業の取組についてはEUが先行しているのはご承知のとおりであるが、その推進の大きな原動力になったと考えられるのがEUオーガニック会議である。生産者・消費者・事業者・自治体・行政が一堂に会して、現場の実情を踏まえて有機農業の生産・流通や政策等について率直な意見交換を積み上げてきたことが奏功したと理解されている。
EUオーガニック会議をモデルに、日本でも幅広い関係者が集まって建設的な意見交換・政策提言等を行っていくための場としてオーガニック会議が設けられた。ここでは発足に際して有機農業以外を排除するのではなく、JAグループの環境調和型農業をはじめとする持続可能な農業をも包摂していくこと、有機農業の推進にとどまらず全体での環境負荷軽減にも力を入れていくことが確認されている。
オーガニック会議は設立とあわせて実行委員会を組成して、実行委員会の中に分科会を設け、みどり戦略法案の法制化や食料安全保障についての政策提言活動等を開始しており、6月には会議「オーガニックコングレスジャパン」の開催を予定してもいる。こうした活動にJAグループも参画・交流し、オーガニック会議との連携を梃子にすることによって、環境調和型農業の取組の推進力を強めていくことを期待したい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2022年5月10日号掲載