先の全国JA大会での決議は、「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合としての総合力発揮」を目指す姿とし、(1)農業者の所得増大・農業生産の拡大、(2)地域の活性化、(3)持続可能な経営基盤の確立・強化、を重点課題とする。このために組合員のアクティブ・メンバーシップの確立が必要であり、協同組合としての役割発揮が欠かせないとしている。JA批判に対抗してJA改革が進められているが、「協同組合としての役割発揮」ができるか、今、協同組合の真価が問われているということができる。
このアクティブ・メンバーシップの確立のために、「組合員のニーズにあった事業、活動、組合員組織活動等の取組み」の展開を求めている。その取組みの中心とされるのが、組合員のJA事業の「複合利用」とJAくらしの活動への「複数・2段階参加」の促進である。組合員の意思反映と運営参画を大きく促していくことによってアクティブ・メンバーを増やしていくことを目論んでいる。さらにアクティブ化していくためにより肝心なことは、組合員の自主性を引き出し、組合員主体の活動を広げていくことではないか。
こんなことを感じている時に映画「ワーカーズ・被災地に立つ」を見た。日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会・センター事業団が制作したもので、東日本大震災の被災地となった岩手県大槌や、宮城県の気仙沼、亘理、登米で展開されたワーカーズコープの仕事を丹念に追いかけた記録映画であり、ある意味では地味な映画でもある。
ワーカーズ(協同労働)についてはあらためて紹介するまでもないが、労働者や使用者といった枠組みをはずし、出資者が平等な立場で事業や経営に参加できる協同組合である。震災による被災地で「放課後の子どもや障害児を預かってくれる場を」「お年寄りが安心して暮らせる街を」といった、安心して生きていくために次々と現場で発生してくるニーズに対処しながら、「誰もが自分らしく生きる場」にしていくと同時に、「地域の魅力を生かした村の復興」にまで積み上げつつある。この映画で印象に残る場面は多いが、その一つが「預けるところがない!?」というある一人から出された困りごとに対して、「じゃー作っちゃおうよ!」との発言をきっかけに、協同で仕事を立ち上げ、訪問介護、デイサービス、さらには保育園まで実現してしまう。たくさんの仲間の力が夢をかなえる。
メンバーのアクティブ化とともに協同組合の活性化に欠かせないのが協同組合間提携と「協同組合内協同」である。JAが合併を繰り返し大きくなるほどに、「協同組合内協同」がますます必要となる。組合員が主役となって展開し、これをJAが事業面等から支えていく、という形での協同活動である。集落営農なり食品加工等の婦人部活動をはじめとして、協同労働という働き方も取り入れながら組合員が主役となって「協同組合内協同」を展開していく場づくりが大事だ。足元で発生する問題への対応に、「協同組合内協同」の取組みが大きな力となり、アクティブ・メンバーシップの確立をも促すことになると考える。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2019年5月5日号掲載