自民党農業基本政策検討委員会(小野寺五典委員長)が6月29日開いた会合で、「米の需要拡大・創出検討プロジェクトチーム」における検討状況(中間報告)が示された。
毎年8万tから10万tも減少していく「主食用米」の需要減に歯止めをかけることは、食料の国内での安定供給とともに農家の所得確保による農業の持続的発展の観点から不可欠であるとして、同プロジェクトチームを設置。米の消費減少の課題等について、今後の米消費のあり方、輸出も含めた需要拡大の方向性、新たな需要創出の可能性について検討を深めるため、学識経験者や大手外食事業者、大手流通事業者などからのヒアリング(7回)などを実施。約8万tの需要減は、200億円のマーケットの消失を意味することから、毎年200億円のマーケットをいかに創出するかという観点で議論を行ってきたもの。
同PTが示した中間報告では、現状認識として、「世代ごと等で米の消費動向に大きな違い。米飯給食で育った現在の若年層は、意外に米の消費意欲が高い一方で、中高年層ではパン・麺や肉等への置き換わりが継続。また、中高年層では、家庭内食から中食化も進行。また、いずれの世代でも健康志向は根強い。ターゲットを分けて考えることは有益である」と指摘。更なる議論に向けて、①川下(実需者)から見た需要拡大、②商品開発・新たな需要開拓、③米の需要拡大の視点、を整理した。
なお、今後は、米粉関連事業者、輸出関連事業者などからのヒアリングを行った上でヒアリング結果やPT内での議論等を総括し、結果を取りまとめる方針。
【川下(実需者)から見た需要拡大】 ▼外食や中食の実需者が求める米は、おにぎり、弁当や具体的なメニューに合致した品質の原料米。また、これらの実需者は、提供する商品に応じた安定的な価格で、量を安定して原料供給できるサプライヤーを求めている。▼近年の米価上昇の中で、こうした業務用米の確保が難しくなっているが、中食・外食では、消費者は米以外の様々な商品と比較しながら商品を選んでおり、単なる値上げは消費減に繋がる、▼今後、実需者のニーズに応えられる国内産地の育成や実需者と産地の連携が重要。このままでは業務用需要で輸入米に浸食されるおそれ。
【商品開発・新たな需要開拓】 ▼米の商品開発や新たな需要開拓は、麦の商品等に比べて遅れてきたが、ブレイクスルーとなる商品が登場することで、米の新たな需要が開拓される可能性がある、▼マーケットが拡大する米以外の商品ジャンルで、米を使用した商品を投入できれば、お米の多様な食べ方を提案し、裾野を広げることにつながるのではないか。また、新たな商品が、拡大するマーケットでの棚や売り場を確保できなければならない、▼新商品を投入して間もないタイミングでは、商品価格が高くなりがち。新市場の拡大のために、コストを削減し、価格を抑えていくことが重要、等。
【米の需要拡大の視点】 ▼消費者の多様なニーズに即した米の生産、販売、食品開発、品種改良等が急務でないか、▼このため、既成概念を払拭し、需要の種類別、用途別にポストコロナの需要構造の変化等を見極め、今後、需要の増大が見込まれる分野を中心に、マーケットインの徹底による米の生産、流通等に転換すべきでないか、▼具体的には、需要拡大が見込まれる中食、外食用米飯のSBS米を国内産の低価格帯米に置き換える努力を徹底すべきでないか、▼輸出用米については、政府の輸出拡大実行戦略を更に深掘りして、コストの徹底的な削減や品種改良等を通じて輸入国のマーケットニーズに即応して拡大すべきでないか。