「日本ファームステイ協会」設立と農泊のこれから


日本ファームステイ協会発足の背景から

 (株)百戦錬磨の業務の一つとして、農泊(ファームステイ)に取り組む中で、農泊を提供する方々や、これから取り組もうとしている方々の現状や課題を聞くことが多かった。そうした課題は一企業だけで解決できるものではなく、全国レベルでの支援の必要性を感じていた。また、それが地域にとって持続可能な経済をつくる契機になるのではないかと思った。一方、農泊の拡大が自らの事業に好影響を及ぼすと受け止める企業や団体、行政も多い。
 そうであれば、まずは民間の企業・団体がそれぞれの立場を活かし、農泊の推進を応援する組織をつくり、行政との連携を図っていこうということになった。

その中で、JAグループ(農協観光)とタッグを組もうと考えたのは?

 JAグループはこの数年来、外からの問題提起や提案に対応し自らの改革を進めている。農泊への取り組みもその一環としてあるべきではないかと思った。
 農業生産者の団体として、地域の農家組合員や住民の経済が向上していくならば、当然ここに携わるべきだと思っていた。
 農協観光は、農家組会員に対する旅行事業を展開するだけでなく、グリーン・ツーリズムも長年手がけていることを知った。観光・旅行分野で農村地域に頁献していくことが大きなミッションだと聞き、一緒に取り組もう≠ニなった。

農泊の定義は?

 大きな概念は民泊。民泊は都市滞在型と、地方滞在型(カントリーサイド・ステイ)=農泊に分かれる。農泊はさらに、農林漁業者等の自宅や関与物件に滞在するものと、そうではない例えば古民家を改造したゲストハウスや廃校など公共財の施設を活用したものに分かれる。農泊は農家民泊の略ではなく、さまざまな形態で地方に滞在する「農村民泊」が我々の定義だ。

農泊の現状と課題は?

 教育旅行として発展してきた日本のグリーン・ツーリズムは、農泊の一つの形態である。しかし受入側の高齢化が進み、かつ提供する内容に比べ収益が少なく、後継者も減少している。より単価をあげサービスに見合った適正な収益が確保できるようにしていくことが現在のグリーン・ツーリズム、教育旅行の大きな課題である。
 現状、グリーン・ツーリズムとして展開されている農泊は、教育旅行で発展してきた経緯もあり家主滞在型(ホームステイ型)がベースだが、これと併行して、近隣の空き家や遊休の公共財などを家主不在型で活用していく取り組みも考えるべきだ。
 ホームステイ型以外の選択肢がなければ市場として広がっていかない。家主の負荷を下げた別荘型があってもいいのではないか。広がりのある農泊≠ナ、もう少し経済に目を向けて地域が持続・継続していけるような仕組み作りが必要だ。
 地域にはそこにしかない特色がある。世界中からみれば、日本の特色ある地域を好きになる人は少なからずいると思う。農泊では、不特定多数の人に来てもらう従来型の日本の観光サービスではなく、第二・第三の故郷のように特定の気に入ってくれた人にリピーターになってもらう。その中で地域経済が成り立っていくことが理想だろう。

協会の役割・機能は?

 これから農泊に取り組もうとする方々や、取り組んでいるが課題が多いという方々に対して、ワンストップでの相談窓口が必要だと考えている。手続きから融資等までに専門的に対応し、観光を切り口にした農の世界の6次産業化を目指す。地域にある観光資源を加工し、流通させ、PRするマーケティングが、これからの農泊には必要になってくる。
 そのための適宜なアドバイスができる組織として、求められる人や企業・機関とのマッチングを積極的に行っていきたい。
 地域に本気でやる気のある人材が一人いないと細胞分裂していかない。そうした人達が協会に参加し、経験や課題を共有し合う。それをみんなで支援する形になればいい。できればそこに国が違う、分野が違う外人≠燗れて新たな動きが創れたらいいのではないか。
 少し時間を要するだろうが、欧州の仕組みを参考に農泊の品質の評価制度もつくりたい。これにインターネットによるユーザー評価をハイブリッドさせ、農泊事業者に利用いただける環境をつくりたい。
 国内含め全世界の人々を対象に、お客様と地域のマッチングの相性の精度を上げていくためにも評価制度はあった方がいい。
 協会の運営方向は、会員は、農泊を実践していく正会員と、それを支援する企業や団体の賛助会員、地域の自治体の3種。できれば、賛助会員を多く募り資金的援助を仰ぎ、正会員や自治体が活用できるけ会≠ニして機能していきたい。資金提供する会員には、評議員等の役割を担ってもらい、分科会やワークショップも設け、制度設計や実践検証も行っていきたい。

農泊への思いを。

 私の前職は、(株)楽天トラベルでの新規事業立ち上げであった。その一つに地域振興分野をテーマに、観光客を呼び地方経済をつくっていく仕組みづくりに取り組んでいたが、やればやるほど課題が見えてきた。特にグリーン・ツーリズムはもったいない、もっと需要を創造したいと思い独立し、既存の予約サイトとは異なり一風変わった宿を取り扱う予約サイト『STAY JAPAN』を運営する(株)百戦練磨を創った。社名は何度失敗しても百戦する、常に新しいことに挑戦していく決意表明でもある。
 「明確すぎる移動目的」を地域につくりだし、旅行需要を創造するという経営理念のもと、経済に基づいて農泊を仕組化し、子や孫に続けていけるような一定の市場をつくりたい。純増し続けるインバウンドの方々に地方にきていただくことで、はじめて地方の開国≠ェ始まり、新しい化学反応が起こり、それが間違いなく地域活性化に繋がってくると思っている。
 農家や住民の経済が成り立っていかないと、地域は成り立っていかない。JAグループの皆さんもぜひ組織をあげて、地域活性化のため協会の取り組みをご支援いただきたい。

2018年 4月15日号 第3186号
このひと
(一社)日本ファームステイ協会 代表理事
上山康博 氏

 この2月、(株)百戦練磨、(株)農協観光、(−社)全国農協観光協会、(株)時事通信社が発起人となり、農泊や農村地域への滞在型族行を営む事業者の支援を推進する組織「(一社)日本ファームステイ協会」が設立された。同協会の基本姿勢や取り組み方向を、代表理事を務める上山康博氏((株)百戦練磨代表取締役社長)に聞いた。