就任の抱負は?
 日本の食文化、おもてなしの心は、農産物の品質も料理の技術ともあいまって、全てにおいて世界最高水準。和食に限らず各ジャンルで素晴らしい技術に到達している。世界からいいものを取り入れて、編集と修正で昇華させる日本人の技術は素晴らしい。
 これはもっと誇っていいことだし、次は日本から全世界に積極的に売っていくべきだ。そのためには、日本の素晴らしさと、協会会員それぞれが自店の持つ強さに自信を持ってほしい。
 また、国際的視野を持った将来の外食産業を担う「人財の育成」は重要な課題だ。教育プログラムの開発と実践を積極的に推進し、様々な分野のプロフェッショナルの発掘、育成を推進していきたい。

伝統ある企業の社長だが、企業理念は?
 「我々は、食を通じ日本文化を創造してゆきます。」が当社の理念。京料理を通じて文化を楽しむやさしい食空間づくりをめざしている。料理、雰囲気、サービスのトータルで満足いただけるよう努めている。こうした付加価値を価格に上乗せするという考え方だ。
 めざしているものは「美的文化産業」。美学である「文化」、文明である「産業」のどちらも大切であり、この2つを融合することが重要と考えている。
 当社は京料理ではユニークな、チェーン展開の草分けだ。先代社長の父が約四十年前、「伝統的な京料理を手軽に」と京料理弁当を始めそのきっかけを作った。「老舗店がなぜあんなに安くするのか」と業界からの批判も多かったが、今ではこうした方向も常識になった。
 一部のグルメな方々に食べていただくのも一つの価値観だが、私は1人でも多くの方に食べていただくことが大切だと考えている。世の中に多く出てこそ社会貢献度が上がる。そのためには、伝統の味を大事にしながら、一方では合理性を追求し産業化≠オていく必要がある。
 産業を大きくすることによって値段も安くなり、より多くの方に食べていただけるようになる。チェーン化することで、京都に行かなくとも京都を感じていただける。
 完全な手作りにこだわる人もいるが、機械化などシステム化できる部分はそうすべきだと私は思う。そして、ここだけは絶対手作りでなければという部分は残す。その融合が重要だ。
 この、手作り感と機械化のバランスのとれた融合が、美的文化産業を生み出す。手作りだけが文化なのではない。これは当社の文化であり、各社もそれぞれの文化を持っている。それをどんどん出していけたら素晴らしい。

外食産業から見て日本農業の現状・課題は?
 当社は北京オリンピックに合わせ一昨年8月、中国・北京にも出店した。中国人オーナーのポリシーもあって食材も水も全て日本のものを使い、その分価格は高めに設定している。中国の富裕層は日本の農産物が大好き。勤勉で丁寧な日本人が作る日本産が最も安全で最高の品質だということが分かっている。
 日本は海外から安い農産物を輸入し、外国の方が日本産を買いあさっている。日本の良さを知らない日本人が多い。
 また、日本の農業従事者の時間給を平均すると300円に満たないと読んで驚いたことがある。
 日本の農産物は世界最高の品質なのだから、もっと高く、適正価格で買っていかなければいけないと私は思う。消費者にも良いものはある程度値段が高くて当然という消費者力≠ェ必要だ。こまめに小さく買い、これまで買い過ぎて捨てていた分を料理技術によって減らせばいい。
 昭和60年、京料理組合の若手による「芽生会」の会長だった時、京都の伝統野菜を復活させようとシンポジウムを開催し、翌年府が京都固有の伝統野菜を約四十種認定。そこから京野菜ブームが始まった。これは、我々京都の料理屋が地元の野菜を地域の生産者からどんどん適正価格で買おうということから始まったものだ。
 食で「ユニクロ現象」があってはならない。工業製品と違い命を預かっている食について、低価格だけを追求して労賃が安いからと海外で生産することは、本来あり得ないことだと考えている。
 流通量の4割を占める量販店で適正価格の意識が高まることが望ましいが、6割を使う中小クラスの外食企業が数は圧倒的に多いのだから、こちらに焦点を当てることで、またいろいろな取り組みができると思う。
 産地との直接交渉では一定規模の出荷分量が前提となりがちだが、あまり多くは必要としない中小クラスの企業がJFに組織的に参加することによって、企業間での調整も可能になるのではないか。

農業者・JAへの要望・期待は?
 地元のJA京都には非常に懇意にさせてもらっており、中川泰宏JAグループ京都会長にも店をよく利用いただいている。京料理業界はほとんどJA仕入れ。少ない分量でもこまめに臨機応変に対処していただいており、ありがたい。
 JFでは、中小クラスの企業の協会加盟を一層増やしながら、年6回実施している産地見学交流会をさらに展開し、量≠フ取引とは違う様々なニーズに応じた取引が広がっていけばいいと考えている。会員同士や産地との情報交換も促進していきたい。


2010年 6月15日号 第2899号
このひと
日本フードサービス協会 会長
佐竹 力總 氏

 日本フードサービス協会(JF)の新会長に5月、佐竹力總副会長(美濃吉社長)が就任した。約290年の歴史をもつ京料理店の10代目当主だ。日本の食と農業をどう捉え、外食業界をどう率いていこうとしているのか、佐竹新会長に聞いた。