改めて東京穀物商品取引所を株式会社にしたことの意義は?
 一つは、会員制に比べ世の中の動きに対して迅速に対応することが出来ること。第二に、株式会社は利潤をあげてステークホルダーにそれを還元、とりわけ株主に対し配当を行うわけだから、積極的にプロモーションにでる。そういう立場に立つと役職員の心がけもまるで違ってくるし、コンプライアンスの点でも非常にレベルが上がる。第三は、一番大事なことだが、会員制組織は会員が抜けることになれば持ち分を引き上げてしまうため、財政基盤が非常に不安定だが、株式の場合は、いったん購入された株式は譲渡されていき会社自身の経営基盤は安定する。だから今回株式会社になるにあたっては増資も行った。今後上場するようになればマーケットからも資金調達が出来るから、その点で財政基盤を確実なものにする。

なぜ、このタイミングなのか?
 およそ商品やデリバティブの世界では、海外が栄え国内が沈滞しているのが基本的な現象。それは、日本の商品先物市場に対する信頼感が今ひとつであることと、背景にある日本の経済政策が国民や海外からの信頼を回復していないという、二重の問題である。そうした状況の中で、昨年の通常国会で商品取引法が改正され、国内の公設取引所、店頭取引、海外先物取引の三つが、同じ制度下でいずれも同じ舞台で出来るようになった。いろいろな被害や苦情の多かった店頭取引や海外先物取引も国内公設取引と同じような規制の下に置かれる。
 もう一つは、金融と証券と商品の垣根が低くなってきている中で、それらの連携を自由にとれるようにする、遅まきながらの改正である。会員制の組織より株式会社の方がいろいろな連携をとりやすい。業務提携のようなものや、株の相互持ち合いもあるだろうし、共通のホールディングカンパニーを持つことも考えられるだろう。そうしたことを考えると、早い時期に株式会社にしておいた方がよい。一年後に実施されるのだから、今がタイミングとしては最後のチャンスと考えた。

平成17年頃、「米」の申請を出して却下されたが今後の対応は?
 時期的な目処は立たないが意欲は満々だ。「生産調整に著しい影響を及ぼす」というのが、あの時の不認可の理由だった。生産調整の輪の中に全員繋ぎ止め、生産者サイドが価格イニシアティブを握るということがその背景だったであろうが、新政権下では価格支持政策から所得補償政策に切り替わった。所得は補償するからマーケットでの価格変動は受認する、つまり価格支持はしないということだ。そうなれば、価格変動リスクに誰かが保険をかけなければならない。
 また、市場価格と生産費の差を所得補償すると言っている以上、公正・透明な市場価格がなければならない。我々は他の産物では6ヶ月、1年先の先物から今月落とす「当限」のものまで、長い期間を提示している。当限の価格は現物価格に近いものとなっている。その点では公正な価格を表示することが出来る。価格形成が出来、保険がかけられることになれば、所得補償として市場価格と生産費の差を埋めるだけでなく、春に作付けた段階で売っておけば、農家は次の年の経営計算も出来るようになる。特に大規模に米を作る方々にリスク回避の場を提供することが出来る。
 世の中全体の動きとして、国家貿易や国の管理品で国が在庫のリスクをとらないようになってきた。小麦なども買い入れたら即売り渡す、在庫はメーカー持ちとなる傾向にある。それだけ国が費用をかけて在庫を持つ余裕がなくなっている。とすると在庫中に価格が替わるかもしれない。そうした状況で天候リスク、需給変動リスク、価格リスク、在庫リスクに対し、取引所の商品先物はリスクを回避する場にもなる。ものを持っている人(ヘッジャー)には損はない。

主食の価格乱高下に対する消費者の不安に対しては?
 理論的にも過去をみても、先物のマーケットは日々の動きはともかく、長期には現物市場より価格変動は内側にある。また、いくら変動しても消費者には関係ない。なぜなら、現物市場がヒートした時にはそれを冷やす働きを先物市場はもっている。それは戦前の米の相場で証明されている。つまり、価格変動幅を小さくすることに対して商品先物が貢献出来るということ。そこを消費者にはPRしたいと考えている。
 要は消費者、生産者、流通業者にしても、経営計算、家計計算が出来ることに対し貢献できればいい。結局、ものの値段は需給で決まるわけだから、大不作であればどんなに頑張っても値段は上がる。ただ、あまりにも急激な上昇であるならば、先に手当していた人達は、手当した価格で商売が出来る。従って、逆に安定化に寄与できる点をもっと一般の人に啓蒙したいと思う。

農業関係者に対しては?
 グローバル化の時代、日本の農業は大変なポテンシャルを持っている。優れた経営を念頭に生産活動に取り組んで欲しいし、その優れた経営に役立てるために我々を使って欲しい。もちろん優れた経営だけで日本の農業が成り立つわけではない。その周りには、総生産を高めるための兼業農家やホビー農業等がある。優れた経営と総生産と地域社会が一つになって農村を発展させていくことが重要だ。

2010年 2月 5日号 第2885号
このひと
東京穀物商品取引所 社長
渡辺 好明 氏

 東京穀物商品取引所は、昨年11月2日に株式会社化し、従来の会員制組織の理事長であった渡辺好明氏が社長に就任した。渡辺氏に株式会社化の意義や米上場問題への考え方を聞いた。