―まず、今大会のテーマ設定とねらいを会長から。
 竹村
 今大会のスローガンは「つかみとれ『輝く農業の未来』」、副題は「No farm No life」としています。農業を取り巻く厳しい状況を変えて、明るい未来になるようにしなければならない。それは、まず自分たちが動くことで掴んでいかなければならない。「農なきところに暮らしなし」。みんなで一つになって変えていくのだという気持ちを込めたスローガンです。変えるのは自分達、自ら動こうと。
 当日は「JA青年の主張全国大会」「JA青年組織活動実績発表全国大会」のほか、1県1分間スピーチ、JA青年の歌「君と」の全国コンクールなども開催します。今大会では、我々の熱い想いをぜひとも伝えたいと、全国消費者大会などでチラシを配布し、広く消費者のみなさんの参加も積極的に呼びかけました。
 また、大会終了後には、新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定に向けた検討が開始される中、各党の代表者にご参加いただき、農業基盤拡大・自給率向上実現に向けたパネルディスカッションも行い、今後の農業・農村政策へ、我々青年農業者の要望を反映させていきたいと考えています。
 ―野村さんは、この大会をどのように捉えておられますか。
 野村
 JAの青年部のみなさんとは深い因縁があります。私がまだ時事通信にいた20年ほど前、ちょうど米の輸入問題が議論されていた頃、マスコミと青年部のみなさんとの意見交換会をもったことがありました。
 その場で、私は「国民の命の源泉となる農業は非常に誇り高い職業だと思っている。その割には、みなさんは被害者意識が強すぎるように見受けられる。これがあると、国民との距離はいつまでも埋まらない。ぜひ、胸を張ってみなさんの主張をしてください」と言いました。そうしたら、大変な反発がでてすごく叱られました。ただ、帰るとき数人が追いかけてきて「おっしゃるとおりです」と言ってくれた。非常に嬉しかったし、このことが私が農業問題を取材し続けた原動力にもなったのです。そして今、厳しい状況を自らが変え、明るい未来を自らが掴みとっていこうとう大会スローガンは、当時私が言いたかったことそのものであり、会長のお話しを聞いていて非常に感動しました。
 昨年の大会は、ちょうど国民の「食」への不安が高まっていた時期に開催されましたが、壇上に『みなさんの食卓は私に任せなさい』との垂れ幕がありました。これはすごいと思いました。そこで全中や全農に、これを前面に打ち出すべきだと言ったことがあります。この垂れ幕の主張が今、JAグループが展開している「みんなのよい食プロジェクト」運動につながっているのではないかと思います。若い人の感覚の鋭さに感心しました。嬉しいかぎりです。
 私はこれまで2回「青年の主張」と「活動実績発表」の審査に携わりましたが、1回目からこの人達の発表内容は素晴らしい、これは広く世間に公表し誇るべき内容だと思いました。そこで審査講評の時に、「みなさんだけで聞いたり感動したりするだけでなく、ぜひこれを広く社会に開いて欲しい」と申し上げました。今回は一般参加者も広く募ったというのは嬉しい話です。大いに呼びかけていただきたい。また、来賓も政治家だけでなく、例えば農産物の実需者や消費者、加工流通業者の方々などもお招きすると、大会の内容を見た人達は、おそらく「日本農業は信頼できるね」と思うに違いありません。こうした点も検討いただき、社会に開かれた大会となることを期待しています。

 ―会長ご自身、日々営農に携わられて、今の日本の農業にはどのような問題点があると感じていらっしゃいますか。
 竹村
 やはり、所得の問題が大きく横たわっています。一生懸命働いて良い農畜産物を作り出荷しているのに所得的に苦しい。今の情況では自分の子どもに胸を張って「農業をやれ」と言える姿になっていないのが一番辛い。どんなに苦しくても子どもや家族、そして国民の食を守っていきたい。そのためには農業で生活できる所得が必要です。子ども達に自信をもって農業を勧められるような所得の実現に向けて、もちろん自分達も努力をしなければなりませんが、それでも無理な部分があり、ここは国をはじめとした行政の支援で埋めていただきたいと思います。ヨーロッパ等の先進国は、直接的な所得補償の形で農業を守ってきました。日本にこれからも農業を残し維持していくためには、こうした支援が不可欠だと考えます。
 ―野村さん、長年記者の目から日本の農業を見てきて感じられることは?
 野村
 今大会のサブ・スローガン「No farm No life」は、「農のないところに生活なし」とも解釈できます。しっかりとした農業がなければ、健全な生活ができる社会にはなり得ません。これは今、世界共通のテーマだと思います。当然、日本も国民全体でこの方向へ向かって行くべきですし、それを最前衛、最先端で実践していけるのは、JA青年組織ではないかと思っています。

 ―こうした農業の現状を受けて、全青協は現在どのような活動に取り組んでいますか。
 竹村
 全青協では、20年度を初年度とした3か年の中期活動計画に基づいて、組織基盤強化、食農教育強化、JA運営への参画、情報ネットワークの充実を4本柱とした活動を展開しています。
 組織基盤強化では、現状67.8%の組織化率をぜひ100%にもって行きたいし、JA運営の参画では、全盟友の正組合員加入とともに、経過措置として青年部枠を設け1JA1理事・参与と総代就任をめざしています。食農教育の強化では、各県それぞれ工夫をこらした活動を展開し、その取り組みを組織外にも積極的にアピールしているところです。情報ネットワークの拡充では、全青協と盟友の双方向の情報交換の充実を図るとともに、JAのホームページでの青年部のページ開設を呼びかけています。
 組織的には、この間10万人をめざした「JA青年仲間づくり運動」を展開してきましたが、現在の盟友は7万人を割り込んでいます。ある程度の年齢になり青年部を引退する盟友数に新たな盟友数が追いつかないのが現状です。しかし、組織が元気にならないと新しい盟友も拡大できません。組織を活発にすることで、青年部に入ると自分の経営がよくなるような、青年部に入ってよかったと思われるような組織にしていかなければならないと思っています。

 ―野村さん、こうした全青協の活動へのご提言は…
 野村
 今の農業の最大の問題点は、農業の現状をもっと国民・消費者に知らせる努力をしなければならない点にあると常々考えています。食農教育とはこうした努力を意味していると思います。
 農業生産の努力に対する適正な価格設定は、日本の農業の維持には絶対必要なことで、そのためには、農の現状を国民・消費者に知ってもらわなければなりません。ところが今、消費者に農の現状はほとんど知られていません。最近は「安全・安心」が少し入ってきたものの、農畜産物や食品の選択基準は依然価格が大きな比重を占めています。農の現状が十分に知られていないから、農産物の選択基準が価格のみになってしまう。これは消費者にとっても不幸なことです。
 農作業体験も必要ですが、それに終わらせることなく、農業の現状をもっともっと知ってもらう。それに基づいて「適正なニーズ」が形成され、そうした農畜産物を消費者が選択する。そしてそのニーズに基づいて生産が行われ、その生産情報をどんどん消費者に届けることで、消費者はさらに適正なニーズに磨きをかける。この両方が相俟って初めて日本の農業はうまく回っていくのではないかと思います。
 消費者は、こういう所でこのように作っているから安全でおいしいのだということを知れば、それに対してそれなりのお金を払うことを納得します。こうした形が出来上がることは、日本最大の資源である農林水産資源を無駄なく有効に使う途でもあると思います。
 全青協の掲げる食農教育の強化も、国民・消費者に農業の現状をわかってもらう観点からの取り組みを高めていって欲しいと思います。その意味では、情報ネットワークの充実は、食農教育とも表裏一体の関係にあると思います。
 竹村 食農教育の強化に関しては、まず情報発信が重要だと思っています。この間、いくつかの消費者座談会に出席させてもらいましたが、「農業が大変で苦しいかどうか、私たちには全然伝わってこない。情報が全く足りない」と言われました。やはり「これだけ働いてもこれだけの収入なんだ」ということを実感してもらい、「これは本当に大変だ」ということを、食農教育を通じて分かってもらわないとなりません。
 外国産と国産が並んでいるとき、「頑張って私たちのためにいいものを作ってくれているのだ」と、我々の取り組む農業の価値を認めて国産を選んでもらえるよう、食農教育活動を強化していきたいと思います。それが、自分達の職業、日本の農業を守ることにつながっていくのですから。
 昨年、全青協では、委員長会議のたびに食農教育の学習会を開催してきましたし、各県の活動にも食農教育を必ず取り入れるよう、具体的な取り組み方策を提案したりしています。こうした活動を今後も続けて、青年部にとって食農教育活動は当たり前になるような形にもっていきたいと思います。

 ―これから、仲間を拡大していくために、各地域の青年部はどのような活動を展開していったらいいとお考えですか。
 竹村
 食農教育は当然として、もう一つ大事なことは自分達の生活が良くならなければ、活動するゆとりも生まれないということです。したがって経営基盤をいかに確立していくか、という視点での活動も入ってくるともっと魅力ある組織になっていくのではないでしょうか。
 みんなで集まって交流を深めることに加えて、食育等での地域貢献や農のアピールに取り組み始めていますが、その次のステップは、自分達の経営がよくなる方向にどのように活動をもっていけるか、みんなで考えることではないかと思います。青年部活動で経営がよくなった、新たしい経営ができたと感じてもらえるような仕組みができれば、さらに活性化した組織になると思います。
 野村 地域の中心となる農業は、水田や畑作、酪農・畜産等、個別品目の技術や経営を高めていくことも大事ですが、これからは、これらが個別に存在するのではなく、地域全体との繋がりのなかであるべき方向を考えていくべきだと思います。
 それは確かに負担になりますが、やりようによっては地域の農業に対する地域住民・消費者の支持を得ることに繋がっていきます。たとえば、環境にこだわって作った米をブランド化し、消費者から「あそこの農業は素晴らしい」と言われるようになる。厚生連等で地域医療を担っているJAは、その誇りを充実させていくことで、その社会的貢献度が評価されますます地域住民から支持される。農村景観を保全することが観光資源となり人が集まり、その地域の農畜産物が支持される…。こうした農業と地域、消費者とのいい関係が生まれることが可能になるのではないでしょうか。
 それを私は"シナジー効果"といっています。農畜産物個別品目では微力でも、環境・健康(福祉)・観光の"新3K"と農業を結びつける、また今、国産飼料作りに耕畜連携が進められていますが、流通加工業とも連携してその飼料で育てた畜産物の販売までてがけていくような、農商工連携の取り組みも、地域全体に新しい産業を創造することでしょう。つまり1次産業から3次産業までを統合した第6次産業プラス新3Kを統合するような対応が必要です。こうした連携によって資源を有効に使っていけば、農業は日本で一番おもしろい産業になると思います。
 今、地域は非常に沈んでいます。大不況で雇用が深刻な問題となっている中、受け皿として農業が注目されていますが、これを含めて地域振興に果たす農業の貢献では非常に高いものがあります。この事実を広く国民に知ってもらうことで、例えば、今日この野菜を選んだことは、あの地域の福祉や環境、景観の維持に役立っている、と感じてもらえるような購入スタイルをつくりあげていく。これが、今一番おしゃれな考え方で、若い人ならきっと分かってくれるのではないかと思います。まず、若い人からこういうことを積極的に進めていだだきたいと期待しています。

 ―JAと青年組織のこれからのあり方については、どのようにお考えでしょうか。
 竹村
 「自分達が利用したいと思えるようなJAに変えようじゃないか」と、青年部の中でいつも話しています。それには、文句だけ言っているのではなく、必要あればどんどんJAの中に入って、使いにくければ使いやすいように変えていかなければならないと。盟友の中には、法人に近いような経営をして、JAと距離のある人も結構います。しかし、もし青年部が、自分達が利用しやすいJAの形に変えることができるとすれば、そうした人達も、JAと一緒にやった方がメリットがあると思うようになるでしょう。そうした形にもっていきたい。よく法人の"JAばなれ"といわれますが、こうした事業ならぜひ利用したいと思われるような"使いたいJA"になる必要があると思います。
 そのためには、組合員・地域住民が今何を必要としているのかを把握し、その提供に努める、満足度向上の視点での事業展開が求められていると思います。
 野村 全く同感です。JAが大型化し、JAと組合員・地域住民との距離が広がってきています。これをどう解消していくのか。営農指導を始めそれぞれの分野でより専門的知識をもった人員の配置と、その全体をコントロールするスーパーバイザー的な存在で構成する組織につくり替えていく必要があるのではないかと思います。そのためにも人材育成は大事で、例えば"JA大学"のようなものをつくって、中長期的視点で本当のプロを育成していくことが"使いたい"と思われるJAになる一つの途だと思います。
 私も、会長が言われるように、法人にとっても"使えるJA"、法人も前提としたJA でなければならないと以前から主張しています。JAに「法人部」をつくったらどうかとも考えます。それくらい思い切った転換をしていく必要があると思うのです。
 日本農業は今、国民の期待を非常に集めているのに、JAは残念ながらいま一つその期待に応えきれていません。今のJAにとって一番大切なのは、国民・消費者の期待にどう応えるかであり、それがひいては組合員のためになるという考えをもって対応するべきだと思います。
 そうした現状を、最前線で肌で感じているのが青年部のみなさんだと思います。私は、日本の農業全体をコーディネートできる組織は、JAしかないと思います。素晴らしいJAに改革されていくために、青年部のみなさんはぜひ、JA経営への参画目標を達成して、新しい感覚・発想で、JAをぐいぐい引っ張っていただきたいと思います。

 ―それでは最後に、青年大会を機に全国の青年農業者へのメッセージを。
 野村
 大事なのは情報。JAは全国に950万人近い組合員のネットワークを持っています。しかも、JAではいろいろな現業を抱えたネットワークを持っています。このネットワークを活用して食や農の重要性を訴えていくことは大変効果があるし、農家のためだけでなく間違いなく日本のためになります。特に青年部のみなさんには、あらゆる機会を通じて広く自分達の活動を国民・消費者に訴えていくような展開をしていただきたい。若いみなさんが、新しい発想で新しい活動を率先して行い、それをJA全体が追いかけていくような構図になることを期待しています。
 竹村 農業経営は厳しさを増していますが、国民にとって最も大事な食、それを作っている我々は本当に必要とされる存在なのだということに、自分達自身が自信をもって、農業の未来を明るくしていきたい。それは、自分達のためだけではなく、子ども達のためでもあるし、国民のためでもある。それを実現するために、まず自らが動き現状を変えていく。大会を契機にそんな気持ちが一つになって大きな力となって、明るい未来を掴みとっていきたいと思います。

2009年 2月15日号 第2848号
対談
JA全国青年組織協議会会長 竹村英久氏
農中総研顧問(コンクール審査委員長)野村一正氏

 2月17・18の両日、全国から1000名を超えるJA青年組織の盟友が東京・日比谷公会堂に集まり「第55回JA全国青年大会」が開催される。今回は「つかみとれ『輝く農業の未来』〜No farm No life〜」をスローガンに、日本農業を支える若い力が抱く「農」への熱い想いを結集する。大会開催を機に、農業・JA・地域におけるJA青年組織活動の重要性とこれに対する期待を全青協・竹村会長と、「青年の主張」「活動実績発表」の審査委員長を務める農中総研・野村顧問に語り合ってもらった。