運動を始めたきっかけは?
 2003年に札幌へ赴任し、北海道の食材を楽しもうと思ったが、食料自給率200%を誇る北海道でも、スーパーでの道産品は半分程度、居酒屋でも地元の酒や肴になかなかお目にかかれない。食が全国一律になり過ぎ、地方に行っても郷土料理を出してくれる店は少ない。自分が飲み食べたいがために地場産を応援しようと、遊び心で始めた。
 使用する食材の食料自給率が50%を超えたら、店頭に緑提灯を掲げてもらう。提灯の☆は5つ。50%以上の☆1つから90%以上の5つ☆まで、店主は自己申告で星を塗りつぶしていく。自給率は重量ベースや金額ベースではなく、食材の性質のみで決まりかつ安定しているカロリーベースとした。当然、季節により仕入れる食材は異なるから厳密ではない。店主が自らの判断で星の数を決める。もし、星の数を維持できなくなったときは、☆に白い紙でも貼り「今はこれだけ」と正直に言う。違反したと思うものは「反省と書いた鉢巻きを巻く」か、「丸坊主になって反省」することとしたが、そうした店は未だ現れていない。

運営方法は?
 飲み仲間の初期の隊員達がボランティアで手分けしている。農研機構を退職した水島明さんが連絡窓口として事務局引受け、自宅で参加申し込みやメディアに対応している。提灯の発送も、同封するチラシの作成も、それぞれ別の隊員が引き受けてくれている。ホームページは、システム会社の社長が作成してくれた。ホームページには、店からの参加申し込み欄や応援隊員募集欄を始め、参加店の情報が網羅されている。携帯電話からの検索も可能だから、出張先でも緑提灯を探すことが出来る。提灯は隊員の伝手で、和歌山市に古くから続く提灯屋が、半ばボランティアで生産してくれている。提灯代は隊員の寄付で賄っていたが、1000店を超えたをのきっかけに、発送費込みの実費、1張1万円の寄付を参加者から受けることにした。

わずか3年余で、なぜここまで拡大したと思うか?
 今年1月には80店を超え、新聞やテレビでも大きく取り上げられた。その直後に中国製冷凍ギョーザ事件がおき、これと関連させての報道も相次ぎ、問い合わせや参加申し込みが殺到した。食の根元がしっかりしていない現状に、誰しもが潜在的におかしいと思っていた。ちょうどその時に、分かりやすい運動として緑提灯があった。簡単で分かりやすいシンボルや標語をもたないと運動にはなりにくいということだろう。
 緑提灯は、あくまでも店主の地場産品応援の心意気である。だから星の数も正直を重ねて信用を得るのが一番だ。応援隊員は「自給率向上貢献にちょっと一杯」と自主的に緑提灯の店に通う。緑提灯運動はあくまでも個人の活動をベースとしている。一括仕入のチェーン店ぐるみでの参加や、会社ぐるみでの応援隊参加申し込みはお断りしている。無理ない気軽な運動として広がったのではないか。

緑提灯運動のこれからは?
 福島では参加店主が、近隣の店に勧めてくれたり、長野では緑提灯応援の会が出来たりと、地元でのネットワークが広がりつつある。8割は居酒屋だが、フランス料理店からや、直売所を営む農家、農産物加工メーカー、保育園からの申し込みもある。
 当初の「全都道府県に緑提灯を」という目標は、今年3月5日に達成した。全国に50万軒あると言われる飲食店の中で、緑提灯を掲げる店は、現状0.3%弱にすぎない。あと10年ぐらいかけて1%、5千店ぐらいになればいいなと思っている。
 緑提灯は認証制度を導入していない。認証とは他者に認めてもらうことで自律的とは言えない。認証したから違反がないという保証はない。むしろその対策に細かすぎるほどの規定を作り、かえって普及を阻害し、所期の目的を達成出来ない場合もある。自己申告は自らの意思である。星の数は店主の心意気や覚悟であり、それを審判するのはお客である。認証が法律ならば自己申告は道徳である。人と人との暗黙のルールとして道徳が発生し、道徳で律しきれない部分を法律が補完してきた。当初は意識しなかったが、遊び心を根底に、ルールは自己申告の上、道徳的な罰則しかない緑提灯運動は、地場産・国産食材普及のための新しいタイプのマーケティング法ではないかと思うようになった。
 これからも、じっくり、ゆっくり緑提灯運動を進めていこうと思う。

自給率向上対策へのご自身の思いは?
 人は本来、強制されることを厭う。中でも何かを食べろと強制されることは一番嫌なことではないか。今、必要なのは地場産や国産を食べたいと思えるような環境づくりはないか。自給率を上げるためには、まず消費者が喜んで選ぶ物つまり安くて美味い物を作らなければならない。財布から金を出し選ぶ権利は消費者にある。消費者に選んでもらう為の小さな目印の1つが緑提灯であり、そうした目印が色々な物にあってもいいのではないか。斬新なアイデアが多くの人から出ることを期待する。

2008年9月25日号 第2833号
このひと
農研機構中央農業総合研究センター所長
丸山 清明 氏

 「地場産応援の店」である緑の提灯が小樽に掲げられて3年余。9月8日現在で全都道府県1347店に緑の灯がともる。「赤提灯と緑提灯が並んでいたらためらわずに緑提灯の店に入る」ことを義務とした応援隊員も1500名以上が登録されているほか、“自称”や“勝手”隊員は数え切れない。食料自給率向上へ各種運動が展開される中、「酒飲み親父の遊び心」から始まった運動拡大の背景を発案者である丸山氏に聞いた。