まず、就任の抱負から…
 今、日本の農業は高齢化の進展と後継者不足、原油価格の高騰に伴う飼料・肥料等農業生産資材の高騰、WTO農業交渉など多くの課題に直面し、農家組合員やJAを取り巻く環境は極めて厳しいものがある。しかし、必ずしも厳しいだけではない。世界的な食料危機が現実のものとなり、食の安全・安心や食料の安定確保に対する国民の関心は、かつてないほど高まっている。その意味では“追い風”が吹いている。これをうまく活用してピンチをチャンスに変えていくことが、ここ2〜3年の最大の課題になると考える。食料主権の確保の観点から、JAグループは一体となって安心・安全な国産農畜産物の安定供給により一層努めていかなければならない。
 JA共済事業にとっても、今は最大の転換期にあると受け止めている。我々の事業経営基盤である組合員の減少に歯止めがかからない中、日本農業の再構築とともに、事業基盤再構築が喫緊の課題となっている。その中でニューパートナー獲得をはじめとした次世代層への取り組みを強化していかなければならないと思っている。

共済事業をはじめとしたJA事業への日頃の思いは?
 私は、大学卒業後三十数年専業農家として生き、営農経済事業はもとより信用・共済事業も100%JAを利用する中で、農家組合員の立場から時々のJA事業に対し、建設的な提言をしてきた。その後、縁あってJA組合長、県連会長そして全国連会長となったが、「農家の立場とJAの立場は常に一体である」ことを、改めて認識し訴えていく必要があると思っている。
 共済事業をはじめJAの各種事業は、地元JAに対する農家の安心や信頼の思いがあってはじめて存在する。JAは、各種事業の展開を通じて農家組合員や地域住民に様々なサービスを提供することで、さらに安心と信頼の絆を深めていく。特に共済事業は、農家組合員が営農生活を継続していくための経済的保障をはじめ、様々なリスク保障について、協同組合の基本理念である相互扶助の精神を発揮する最たる事業であり、組合員の豊かな生活や安心して暮らせる地域づくりに貢献している。また、JA経営基盤づくりに大きく貢献し、その収益が組合員・利用者に還元されている。こうした形態の中で農家の立場とJAの立場を区別するようなことがあってはならない。常に農家組合員と一体となった運営の中で、組合員・利用者に安全・安心と信頼を提供していく姿勢が、改めてJAに求められていると考える。

JAの総合事業のあり方に対する議論に対しては?
 農業協同組合が、なぜ法律で信用・共済事業を営むことが認められているのかを考えるべきだ。総合事業あって初めて農業協同組合が存在し、営農経済事業も信用事業も共済事業も成り立つ。総合事業はまさに農業協同組合のことを指す。
 当面の市場原理主義で解決すれば済む問題ではない。そこには、協同組合精神、相互扶助の精神に基づいた長い歴史と知恵が刻み込まれていることを、我々も忘れてはならない。それを忘れて事業を展開したとき、もはや農業協同組合の存在価値はないと思っている。理不尽な批判には毅然と対応していかなければならないし、理不尽故に自然に淘汰されていくものと思う。

これからのJA共済事業の方向をどのように描くか?
 前任の野村会長が手がけてこられた、組織経営基盤拡充と「3Q訪問プロジェクト」による全戸訪問活動を、さらに発展・充実させることが、まず第1に私が取り組むべき課題だと認識している。野村前会長の路線を着実に一歩ずつ前に出していきたい。
 組織経営基盤をより強固なものとするために、「ひと・いえ・くるま」の総合保障機能を発揮し、3Q訪問活動を精力的に展開する中で、組合員・利用者とのコミュニケーション密度をさらに濃くしていきたい。また、ニーズに応じた仕組開発に努め最適な保障を提供する中で、次世代層や新たな顧客の開拓にも力を入れていきたい。
 さらに、農業の構造改革が進んでいく中で、担い手に対する保障の充実も大事な課題である。担い手のニーズを把握した上で、子会社である共栄火災海上保険と連携しながら、新たな仕組みの開発に早急に取り組み、経営リスク等に対する一層の保障拡充を図っていきたい。
 JAの組合員は減少を辿っているが、私は地域の実態に応じたサービスの提供ができれば、次世代層の組合員化を図ることはそんなに難しいことではないと思う。ただし、今の競争時代の中で、准組合員となることに何らかのメリット、かならずしも物質的なものだけではなく、相談機能の発揮などいろいろなサービスを含めたメリットを提供していくことが必要だと思う。
 全国連の果たすべき使命は、事業の方向性を示しニーズに応じた仕組開発力を強化するとともに、事業で得た果実をJAや組合員・利用者へ還元することにある。そのためには盤石な経営基盤の確立にも同時並行的に取り組んでいかなくてはならない。

競争が一層激化する中での優位性発揮の方向は?
 生・損保、かんぽ生命、ネット生保等々、外資系も含めて競争は非常に激化してきている。その中で、JA共済は総合事業体の強みを活かし、3Q訪問活動を展開していくことで信頼を勝ち取っていく必要がある。組合員・利用者と直接対面し、個々の保障ニーズを汲み取り、説明責任をしっかり果たしていく。この事業形態を堅持していくことが、競争を勝ち抜いていく道だと考える。
 個々のニーズに合った最適な保障をしっかり説明して提案し、何かあったときには万全の対応をすることが、安心・信頼に繋がっていく。そこで果たす全国約2万2千人のLAの役割は大きいことから、LA占率をさらに高めていく必要がある。また、総合事業を営むJAの全ての職員が共済事業の知識を共有し、LAに組合員・利用者の情報を繋いでいくことも非常に大事だと思う。

社会貢献活動を含めて、これからJA共済が果たすべき社会的責任をどのように考えるか?
 交通事故被害者の社会復帰のために、中伊豆・別府両リハビリテーションセンターの開設や介助犬の育成普及支援活動に取り組むとともに、交通事故を防ぐために子供向けの交通安全ミュージカルや高齢者向けの交通安全落語などを開催している。今後も目に見える形での活動を引き続き展開していく必要がある。
 また、近年地球環境が大きな問題となっていることから、その保全にJAグループ全体として取り組むべき課題も多く、全体の合意形成の中でJA共済の役割を果たしていきたい。
 一方で、共済事業本来の活動である保障の提供を通じた豊かで安心して暮らすことのできる地域社会づくりや事業収益の地域社会への還元も、大きな社会貢献、社会的責任だと受け止めている。よりコンプライアンスを重視した事業を展開し、今後も地域社会への貢献を果たしていきたい。JAと一体となり「愛されるJA共済」をめざしていきたい。

2008年9月 5日号 第2831号
このひと
JA共済連 経営管理委員会会長
安田 舜一郎 氏
 JA共済連が開いた7月25日の通常総代会・経営管理委員会で、経営管理委員会会長に安田舜一郎氏、副会長に花元克巳氏・奥野岩雄氏、代表理事理事長に今尾和實氏が選任され、新執行体制がスタートした。安田新会長に、就任に当たっての抱負と、これからのJA共済事業の展開に向けた思いを聞いた。