これまでの緊プロ事業の成果は?
 緊プロ事業は、先進的でリスクが高い、あるいは機械化されていない、マーケットサイズが小さい、等の理由から、メーカー独自での開発が困難な分野における機械装置の開発をメーカーと共に進めることを基本として発足。これまで15年経過し、世界的にみても画期的な機械を世に送り出し生産者の省力化・軽労化などに大きく貢献してきた。
 最近の例では、「全自動接ぎ木ロボット」が来年度市販化される予定で、欧米からも熱い期待が寄せられている。畜産分野では「細断型ロールベーラー」が高く評価され、トウモロコシの作付面積の維持・拡大に貢献しているが、さらにこれを発展させ、水田転作による飼料作物拡大にも貢献できる自走式の「汎用型飼料収穫機」も市販直前の状況にある。水田関係では、受託生産が拡大する中で勘に頼らない生産をIT技術を用いて実現する、収量コンバインや可変施肥機を送り出そうとしている段階にある。
 現状、日本農業の最大の問題は、担い手の減少のみならず農業従事者の高齢化・減少である。その中にあって、一層の省力化、快適化を実現する新しい農業機械の開発はこれまで以上に重要であると認識している。

第4次緊プロの特徴は?
 緊プロ事業は今回第4期を迎えたが、前述のような観点から、農作業の省力化につながる7機種と、環境負荷の低減や生産資材を効率的に利用する4機種の新規課題に取り組むことにした。
 農作業さらなる省力化に資する機械としては、@長時間労働からの解放をねらいとした「いちご収穫ロボット」、A省力・大規模生産をめざした「加工・業務用キャベツ収穫機」、B都府県産地向けに根や葉の調整を自動的に行う「たまねぎ調整装置」、C果樹生産の安全性向上と省力化に向けた「高機動型果樹用高所作業台車」、D地域の未利用資源も活かした「可変径式TMR成形密封装置」、E稲、麦、大豆、そば等に対応した小型の「中山間地域対応型汎用コンバイン」、F北海道輪作の春作業省力化に向けた「高精度てん菜播種機」、の開発に取り組む。環境負荷の低減及び農業生産資材の効率利用に資する機械では、@環境負荷の低減とドリフト抑制に向けた「果樹用農薬飛散抑制型防除機」、A性状に応じ散布量を適正制御するブロードキャスター「高精度高速施肥機」、B湿潤土壌でも安定的に高速作業が行える「高精度中耕除草機」。C温室効果ガスの排出抑制をねらいとして高水分籾すりと玄米乾燥を行う「玄米乾燥調製システム」の開発が対象となっている。
 この中で、今回5機種を「要素技術開発」とした。これは実用機のコアになる部分を開発することで、実用機の柔軟な開発をめざす姿勢に基づいている。その技術を用いてすぐにメーカーが製品化する場合もあり得る課題である。
これらの開発の推進に際しては、開発期間をこれまでの5年間から3年間に短縮した。生研センターの全ての新規課題でも19年度から実施しており、スピード感をもって研究を進める。3年の中で当初の見込みと異なる場合は、方向転換や課題の中止、新たに課題を追加するなど、臨機応変な対応をめざしていく。
また、開発機種の普及を確実なものとするため、開発段階から生研センター、行政、メーカー、産地からなるプロジェクトチームをつくり、生産現場との連携を強めて、これまで以上に現場重視の開発研究体制の確立をめざしていく。

この他、重要と捉えている課題は?
 安全対策強化も重要な課題だ。高齢化などに対応し、安全鑑定基準を見直すため「農業機械の安全対策に関する研究」に着手する。個別の安全対策としては、自脱型コンバインのフィードチェーンに巻き込まれてケガをするケースが多いことから、緊急停止を確実に行うための機構の開発や、作業機をつけた道路走行による事故が多いこと等を踏まえた作業機運搬台車の開発等を開始する。さらに、実際起こった事故の情報収集・分析を詳細に行い、事故の未然防止に役立てるための調査や所内での体制整備を充実することにしている。

生研センターのこれからの取り組み方向は?
 当センターは、農業研究機関が統合され農研機構の1機関となって4年半が経過した。統合のメリットを一層発揮し、栽培研究や育種研究など異分野との連携の下で、魅力ある機械開発に貢献していくことが大きな課題だ。また、我が国唯一の農業機械に関する公的研究機関として、リスクは厭わず先駆的な農業機械の開発を進めることが必要と認識している。
 こうした観点から、前述のスピード感をもった研究開発の推進のほか、機構内の他研究機関をはじめ関係機関との連携も強化しつつ、将来を見据えた基礎研究の充実も進めているところである。例えば、近い将来、バイオエネルギー生産に不可欠な高収量作物の生産、収穫、運搬に必要となる機械開発に向けた課題等、20年度は5年後・10年後を見越した基礎基盤研究のテーマにも着手していく。
 成果がユーザーである生産者から評価され、日本農業に貢献出来るよう、必要な見直しを絶えず行いながら研究開発を進めていきたいと考えている。


2008年5月 5日号 第2818号
このひと
独立行政法人農業食品産業技術総合研究機構
        機械化促進担当理事 竹原敏郎 氏
  農水省はこのほど、平成15年に制定した「高性能農業機械等の試験研究、実用化の促進及び導入に関する基本方針」の見直しを行い、新たな「基本方針」を制定した。この「基本方針」に基づきスタートした「第4次緊プロ事業」で、農業機械の研究開発を担う(独)農研機構・生研センターの開発方向とこれからの取り組み姿勢について、農研機構の竹原担当理事に聞いた。